私たちについて

文楽舎では何をしているのですかと問われたら、私たちはこう答えています。「何もしない」をしています、と。子どもたちは自分の頭で考えて、毎日を楽しく生きる知恵を身につけようとしています。「学び」も、読書も、パーティやワークショップも、自分たちで企画し、準備し、自分たちが楽しくなるための工夫をします。何事もイヤイヤするのではなく、どうしてもしなければならないことならば、それを楽しもうと考えています。
私たちは、子どもたちの出した解答に〇×をつけません。おとなの用意した「模範解答」と一致しているかどうかだけを求めているのではないからです。生活の過ごし方も、「学び」においても、時間の使い方も、抱えている悩みも、すべてにおいて比較はしないし、〇×はつけません。場合によってはヒントすら伝えません。何もしません。するのはただ伴走者としてそばにいることだけです。
「わからないから教えて」と言われれば、「自分で調べてみようか」と応える。「どうすればいいの?」と聞かれれば、「どうすればいいか一緒に考えてみようよ」と応じる。でも必ずそばにいます。最後まで寄り添い、ただ見守っています。自分の頭で考え、納得いかなければ納得いくまで一緒に考える。私たちが一番大切にしていること、それは子どもたちが「自分の頭で考える」ことです。でも、ほったらかしにはしません。そこには、一人になる時間は大切にするけれど、ひとりぼっちには決してしないという姿勢があるからです。
生活や学習だけでなく、マナーやルールにまで、私たちは手出ししないし、口出しをしません。したがってここで行なわれていることとは、ひたすら「待つ」ことだけです。それは私たちが、「子育て」ではなく、「個育ち」につながる「子育ち」こそが大切だと考えているからなのです。環境こそ整えておくものの、必要以上に水を与えたり、陽を浴びせたりはしません。ましてや栄養価が高いからといって、無理やりに化学肥料を撒くことはしません。もちろん私たちおとながついそうしてしまう背景には、子どもへの「愛情」があるからだというのは理解できます。しかし子どもにとって良かれと思い、先手先手で行なうそうしたおとな目線の育成は、かえって仇になることが多いのも事実です。子どもたちは環境さえ整っていれば、様々な花を咲かせることを、私たちおとなは知っているはずです。文楽舎はそのことを信じ、ひたすら笑顔の花を咲かせるまでそばで見守っていたいと願っています。
私たちは社会の様々な分野におけるエキスパートであるかもしれませんが、子どもたちの笑顔作りの専門家ではありません。私たちは教育や福祉においてはプロフェッショナルかもしれませんが、子どもたちの笑顔作りの模範解答は持っていません。私たちは、素人です。ですから、素人のおとなが子どもたちに教わりながら、お互いの笑顔につながる一歩を、子どもたちと一緒に見つけようと思います。
代表理事ごあいさつ

2011年、未曽有の東日本大震災の後、東北に何度か足を運んでいたある日、私は叔父と海を見ていました。
叔父は何も語らず、長い時間ただ黙って海を眺めていました。そしてだいぶ時が過ぎた頃、ぽつりと言いました。「なぁんもねぐなったぁ」
あの日、漁師をしていた叔父は、一瞬で家も仕事も、そして家族も失いました。凪いだ海を眺めているその時の叔父の目には、悲しみも怒りも見いだせませんでした。叔父は明日をどのように生きていくのだろう、そう思った時、私たち人間が生きていく上で、本当に大切なものが何なのかが、少しだけわかったような気がいたしました。
これまでの私は、教育界に長年従事し、学生や生徒には一点でも多くとることが最善だと教えてきました。また並行して行なってきたビジネスの世界では、社員に一円でも多く稼ぐことを強いてきました。一点でも多く、一円でも多く。しかしそうした価値観は、叔父の前で脆くも崩れ、あの日を境に転倒しました。すると、それまでの私の生き方ではまったく見えていなかったものが、急に見え始めたのです。それは私の目の前で、傷つき倒れている子どもたちの姿でした。驚いたことに、そこにはまったく笑顔がありませんでした。
もし笑顔を忘れてしまった子どもがいるのなら、私たちは笑顔を取り戻すための環境を整えたいと思います。そして決してひとりぼっちではないことを伝えたいと思います。
スタッフ紹介 しーママ

子どもたちからは、「しーママ」と呼ばれています。文楽舎では毎日のおやつや軽食、それから食事づくりを担当しています。子どもたち、とくに幼少の子どもたちとは、折り紙やカード、ボードゲームなどで遊んでいます。
20年間に渡って幼稚園教諭を務めてきましたが、その後は地区委員会や青少年・次世代育成委員、学校評議員などに携わり、地域の子どもたちが持っている様々な背景や環境を目にしてきました。現在は保育園で乳児から幼児までの子どもたちと関わりながら、地域との連携を図っています。
私の一番の喜びは、子どもたちが笑っている姿を見ることです。
スタッフ紹介 Shiori
高校時代はアメリカ、大学の時はタイへの留学を機に、海外の子どもたちの支援ができないかと考えています。大学在学中に国際NGOに所属し、カンボジアの田舎町に実際に住んでボランティアをしたことが、私の現在の目標を方向付けました。今後は、海外と日本、おとなと子ども、人と人との架け橋のような働きができることを希望しています。
文楽舎で行なわれている「何もしない」をするためには、実はとても多くのことをしなければならないことを実感しています。しかも「何もしない」ための教科書がないことも、大変さを増していると思っています。
文楽舎では、中高生の勉強をフォローしたり、海外にルーツを持つ子たちとのコミュニケーションをとったりしています。
私がこれまでに学んだ大きなことは、目の前の「他人事」を「自分事」に引き寄せた瞬間に世界観が変わるということと、「あたりまえ」は決して当たり前ではないということです。
ちなみに邦ロックのライブやフェスに行くことが大好きで、THE ORAL CIGARETTESは一推しです。

団体概要
名称 NPO法人文楽舎〈ぶんがくしゃ〉(特定非営利活動法人文楽舎みんなのよりば)
設立 2013年4月(2024年11月特定非営利活動法人格取得)
住所 〒165-0033 東京都中野区若宮2-21-5
連絡先 03-3223-4211(代表) npobungakusha@mbr.nifty.com
代表理事 林 誠
副代表理事 藤井 久(教育委員会)
理事 近藤宏一(弁護士)
監事 石浦勇人(税理士)
事業の内容
(1)子ども、青年の居場所づくり事業
(2)子ども、青年及びその保護者へのアウトリーチ事業
(3)子ども、青年の生活支援、学習支援事業
(4)子ども、青年の社会参画支援及び人づくりを通じた社会活性化に関する事業
(5)関連団体及び関連機関との連携、協働事業
団体名の由来

「ぶんがくしゃ」と読みます。文楽舎内に一歩入ると、周囲は本だらけです。本棚で迷路のように仕切られたすき間には、様々な本が並べられています。それは、廊下の隅やトイレの中にまで。
本は避難所です。本の中に一時的に身を隠すことができます。でも誰もが同じ本を逃げ場にすることはできません。ですからなるべくたくさんの本を目の前に置きたいと願っています。
本が持っている効用はたくさんあり、生活が豊かになることを私たちは知っています。しかしここではとりたててそれを語りません。子どもたちに読書を強要することもありません。ただ、生活の中に本があり、いつも本と一緒に生きていくことを楽しむだけです。ですから文学ではなく、文を楽しむ「文楽」としました。



文楽舎は、行かなくちゃいけない所と、帰るべき場所との往復からはみ出した、寄り道できる場所です。道草をくって、隠れ家にこもって、そこに自分だけの時間を作って過ごす。それは長い人生の途中で、ちょっとだけ心を休める止まり木のような場所です。だから居心地がよくても、いつかはここから巣立って自立して欲しいという願いがあります。ただ、いつでもふらっと戻って来られる心の拠り所であってもほしいと思います。寄り道できる「寄り場」であり、同時に心の拠り所である「拠り場」という意味で、「みんなのよりば」としました。


