子ども・青年のあしたのために

文楽舎の理念

目の前に子どもが倒れています。そ知らぬふりをして、またいで通り過ぎることもできます。でもそっと近寄ることから始めよう、そう考えました。手を差し延べるか、抱き起すか、手をつないで一緒に歩くか、おんぶするか。どこまで、いつまで? それを子ども自身と一緒に考えたいと思います。

そして支援することを目的とするのではなく、「支援しないこと」もふくめて、まず倒れている子どもに気がつくこと。そこから始めたいと考えました。

ひとりぼっちの子どもがいます。家には親や保護者がいます。学校には級友がいます。それなのにひとりぼっち、そんな子どもがいます。ひとりだけでいろいろな重荷を抱え、辛い思いをしている子どもがいます。そんな子どもたちの存在に、気づくこと。そうしたら次は、「助けて」と声をあげられる環境を作ること。

子どもたちが安心して生きていくことが認められる、周囲のみんなに愛されていることが実感できる、そんな社会を作りたい。

では具体的に何をするのでしょうか。実は私たちの究極的な願いはたったひとつ。それは、子どもたちに満面の笑顔を咲かせたい、ということです。私たちはそれを、目の前にいる、もっとも小さい者のひとりから始めたいと思います。その最初の一歩が何かと言うと、小さくされた者の前にある「つまずきの石」に気づくことだと考えました。

それは例えば、本人が望んだことではない様々な「障がい」です。また、予期しない「アクシデント」だったり、不可抗力による「異変」だったりします。誰かの一方的な「不都合」や「悪条件」かもしれません。すでに「わざわい」や「トラブル」、「窮状」といったものになっているかもしれません。

最初はほんの小さな「悩みのたね」だったものが「ほころび」をつくり、自分自身を守るために「心のハードル」や「心のバリア」をつくり、それらはやがて大きな「壁」となっていきます。そして子どもたちはその殻の中に閉じこもり、ひとりぼっちになっていく。

私たちはまず、その「つまずきの石」を、子どもたちの傍らにそっと寄り添うことで、一緒に気づくことが大事だと思います。そしてそれを無理やり取り除くのではなく、彼らと一緒にどうするかを考えたいと思います。「つまずきの石」が存在する意味を考えたいと思います。その上で、子どもたちが自分たちの意志で、自身の手で取り除こうとするのであれば、私たちはそれを最後まで見守る伴走者でありたいと願っています。

文楽舎は「よりば」です。行かなくてはいけない場所と、帰るべき場所との往復からはみ出した「寄り道できる場所」です。「学校」や「家庭」とも違う第3の居場所。それは人生の途中で、ちょっと立ち寄る「止まり木」です。でもその枝は、鳥を引き寄せることはしません。必要とした子どもたちがいつでも休めるように、ただ待っているだけです。だから文楽舎はあらゆる場面で無理強いはしません。ずっとここに居なくてもいいのです。来てもいいけれど、来なくてもいい場所です。少し休んで、喉の渇きを潤し、羽を休めたら、また羽ばたいて行って欲しい。ただこうは思います。おとなになっても、いつどんな時でも、文楽舎は心の「拠り所」であってほしいと。だからいつでもふらっと戻って来られる場所としてありたい。寄り道できる「寄り場」であり、同時に心の拠り所である「拠り場」なのです。

人は例外なく個人として生まれてきます。だれひとりとして同じ人ではありません。しかし何かの都合で、誰かの損得勘定でカテゴライズされれば、そこでは例外なく比較され選別されてしまう。そのような社会に息苦しさを覚えている子どもたちが目の前にいます。みんな同じではないはずなのに、同じでなければならなくなった途端、はじかれる子どもはいつも少数派です。周囲のたくさんのみんなと同じではない子どもはスポイルされていきます。

でも考えてみてほしいのです。みんなと同じって何?

May you be content with yourself just the way you are.

(あなたはあなたであればいい。マザー・テレサ)

もし笑顔を忘れてしまった子どもがいるのなら、私たちは伝えます。あなたは決してひとりぼっちではないことを、そして愛されているのだということを。

沿革

1987年文楽舎の前身となる学習塾を創設。
開設時から不登校や学習障がいの子どもたちのフォローを行なう。
2011年東日本大震災後、ボランティアで東北に足を運んだことを機に、学習塾事業をやめ、
「文楽舎」設立のための話し合いや勉強会を始める
2013年主たる活動場所を東京都に移転する。
自宅を開放して文楽舎を設立し、子どもたちの居場所(よりば)を作る。
2014年学習塾とは学び方の姿勢や方針の異なる学習支援を始める。
毎日のおやつ(軽食)、食事の提供を開始する。
2015年小・中・高生のよりば活動(家庭とは異なる生活支援や食料支援)を行なう。
2023年海外にルーツを持つ子どもたちの支援を開始する。
NPO法人設立のための勉強会開催。
2024年6月11日特定非営利活動法人文楽舎みんなのよりば設立準備委員会設立。
2024年8月25日特定非営利活動法人文楽舎みんなのよりば設立総会開催。
2024年11月25日特定非営利活動法人格取得。